1.加点項目とは
ものづくり補助金の審査は、申請書に記載する事業計画を中心に行われます。採択されるには、この申請書を高いレベルに仕上げることが必要です。しかし、申請書だけで審査が行われるわけではありません。申請書とは別に、審査において点数がプラスされる条件がいくつか用意されています。これが加点項目で、全部で7つあります。どんな加点項目があるのか、ひとつずつ簡単に説明します。
2.それぞれの加点項目の内容
経営革新計画
有効期間内の経営革新計画の承認を取得した(または取得予定の)事業者は、加点されます。経営革新計画は別のコラムで詳しく解説していますが、簡潔にいうと、新しい事業に取り組む事業者が作成する、中期的な経営計画書です。そして作成した計画を国や都道府県が承認する制度です。この承認を取得している事業者は、実現性の高い事業計画をすでに作成し、その計画を基に事業を行っていると見なされ、加点を得ることができます。
小規模事業者、創業・第二創業後間もない(5年以内)事業者
中小企業庁は、令和元年や令和2年の補正予算関連事業で、創業やベンチャーを支援する多くの施策を行っています。ものづくり補助金でも、小規模事業者やベンチャーが優遇されます。小規模事業者とは、製造業・宿泊業・娯楽業その他の業種では従業員数が20人以下、卸売業・小売業・サービス業では5人以下の会社または個人事業主です。小規模事業者は、補助率も1/2から2/3にアップします。1500万円の設備投資を行った場合、通常の補助金額は750万円ですが、小規模事業者は1000万円の補助金が支給されます。
災害等に対応する取組
この加点には二種類あり、ひとつは新型コロナウイルスの影響を乗り越えるために設備投資を行う事業者と、もうひとつは事業継続力強化計画の認定を取得した(取得予定の)事業者です。ふたつとも別のコラムで詳しく解説しますが、特に新型コロナウイルスの影響を受けた事業者に対しては、令和2年第二回目の募集より特別枠が設けられました。コロナウイルスの影響を受けた事業者が利用しやすいようにさまざまな優遇措置がとられていますので、ぜひ活用を検討していただきたいと思います。
賃上げに対する取組
この加点にも二種類あります。従業員の賃上げと、被用者保険の任意適用です。令和2年度より、従業員の賃上げは加点項目ではなく、申請の必須項目になりました。給与支給総額を年率で1.5%以上増加させ、かつ、最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にしないと申請できません。さらに給与支給総額を年率で2%以上増加、最低賃金を地域別最低賃金+60円以上にすると一段階目の加点、年率で3%以上増加、最低賃金を地域別最低賃金+90円以上にすると二段階目の加点が得られます。被用者保険の任意適用とは、短時間労働者を厚生年金に加入させることです。被用者保険の適用拡大の対象となる事業者が、制度改革に先立って任意適用に取り組む場合に加点されます。
3.加点だけでなく減点措置もある
過去3年間(平成29年、平成30年、令和元年)に、ものづくり補助金の交付決定を受けていた場合、その回数に応じて減点されます。これには、できるだけ多くの事業者にものづくり補助金を活用してもらいたいという意図があります。
加点項目とは、国の政策に沿う取組を行う事業者を、審査で優遇する措置です。ものづくり補助金のメリットが広く理解されて知名度も年々上がり、申請数も多いときで2万件を超えます。その中で競争を勝ち抜いて、採択をより確実なものにするためには、一つでも多くの加点項目を満たしておくことが重要です。